多くの方が海外旅行を経験していると思うが、観光旅行は名所、旧跡、風光明媚なところを旅するものである。海外での生活は習慣も違い戸惑うことが大変多かった。異動により９７年８月より台湾（台北）での２年２ヶ月にわたる日本にない駐在生活を思い出しながら書いてみました。 まず、住まいであるが賃貸用のマンションというものはなく、投資目的で台湾の金持ちが部屋を購入し、値上がりを待っている。よって１年契約であるが何時退去を求められるか分からないのである。 実際、１年を無事経過したが２ヵ月後明渡しを求められた。部屋は基本的にタイル張りで、入り口扉は、鉄製及び木製の２重扉である。防犯の為である。扉を開けるといきなりリビングで玄関というものは全くない。

　一応、家具、家電付きで借りたが、これが曲者で入居１日目でGE製テレビがスイッチを入れた途端に画面がプチッと切れ早速交換となった。しかし３ヵ月後に同様な症状で今度は東芝製と交換となった。次に、電話機もついていたが間違い電話が頻繁にかかって来るのである。しかも早口で中国語をまくし立てられ、こちらの意思は全くおかまいなしである。 紹介してくれた日系不動産会社に聞くと、これはどうしようもないとのことである。 私の先の住人、其の又先の、また先の住人宛に電話がかかってくるとのことである。 この電話機も故障で２度の交換を経験した。この部屋の大家曰く、景品でもらったものは、それなりの品物だな、と一言。 更に風呂用の給湯器（ガス湯沸し機）も２度の交換。更に更に、トイレ便器が水漏れで交換となったのである。
　これらのクレームは不動産会社を通じて依頼するが、担当女性（日本に留学して日本語堪能）は、これが台湾です。早く慣れてくださいとのこと。実におおらかである。 この度重なる故障での一番の被害者は、一緒に引っ越した愛犬である。 エアコンの排水が天井より漏れ始め、バケツで受けていたが、私どもが留守中にその汚水を飲み、翌朝グッタリしていたのである。 動物病院で診察を早速受けたが、人間ドッグならぬ犬ドッグへの３日間入院検査となった。 退院後迎えに行くと、見るも無残に腹部の毛は見事に刈り取られていた。次に交通手段であるが、現在は台北、高雄（台湾南部）間は新幹線が開通し、台北市内は地下鉄も走り赴任時に比べ非常にインフラが整備されたが、当時は、通勤はバイク、バス、自動車、汽車である。 免許のない私は当然バス通勤である。バスは非常に便利で、東京山手線なみに５分おきに運転されている。 しかし、このバスは急発進、急ブレーキ、ハイスピードで運転され乗車していても注意が必要で、つり革につかまっていても都度、体が転倒しそうになる。 つり革自体が固定されていないのである。しかしながら、台湾の方々は平然としており、驚いているのは私だけである。 この乱暴な運転も外国の要人に非難され帰国時には随分とおとなしくなった。

　仕事上の移動はタクシーと飛行機が主で、特にタクシーは２４時間(台北市内)走っており、深夜、早朝、大雨であろうが即、乗車することができる。 皆様の中で、台北でタクシーを利用する機会があれば是非、助手席へ座って下さい。 非常にスリリングな体験ができます。自然と左足がブレーキを踏む動作をしてしまいます。 駐在期間中、タクシーで４度の交通事故に遭遇してしまいました。 タクシードライバーには要注意で、日本と違い乗客が襲われる事件が多発している。 特に、春節（旧正月）前は避けたほうが良い。 ドライバーの３割が前科があり、その又３割が凶悪犯とのこと。なぜタクシードライバーになれるのか不思議であったが、タクシーのレンタカーがあったのである。 現金収入を得るには手っ取り早い方法である。 私の住まいを世話していただいた不動産会社の支店長（日本人）は実に２度も襲われ、入院 生活を余儀なくされた。 これは稀な例である。しかし注意にこしたことはなく、まだ不慣れなころは、目的地まで遠回りされ、割高の料金をとられたことを何度も経験した。 テレビの事件報道には当初びっくりした。突撃レポーター合戦で、現在はだいぶ自粛されたが、いきなり首吊り自殺の生々しい現場が放映されたり、殺人事件の血だらけの現場がお茶の間に流れてくるのである。勿論、逮捕された犯人はヘルメットをかぶってはいるが大写しされる なかでも一番驚いた身近な事件が帰国前に発生した。中正飛行場（日本では成田）で日本人が台湾女性にナイフで刺され、その日本人パスポートが拡大されて映し出された。 日本では大手スーパーの方で、店舗開発の為、駐在していた。私も半年前、営業で面談しており複雑な心境である。三角関係でのもつれであった。 TVCMでは誇大広告が目立ち、ダイエット（痩せ薬）、豊胸、精力剤等、教育上好ましくないとおもわれるものもある。 中でも、身長促進剤で服用使用前、使用後のモデルに、日本の２人の皇太子が勝手に使われていた。どこからかクレームがきたのであろう、一度きりであった。台湾で良いところもたくさんある。

　年末、年始（旧正月）は日本同様、帰省客で車の大渋滞が起こる。そのため、高速道路は無料開放される。ただし条件付で、４人以上で通行しなければ高速道路にのることができない。日本でも採用すれば少しは渋滞が緩和されるのではと思う。台湾政府の悩みのひとつに脱税防止対策がある。中国大陸も同様であるが、賄賂、脱税は海を隔てていても中国人はひとつである。脱税防止のため、売上ごとに政府発行の伝票（有料）使用が義務づけられている。この伝票 には番号がつけられており、２ヶ月に１度の抽選で、最高１００万円の宝くじとなっている。 私も３度、最低金額の４，０００円があたった。 しかし、企業登録しない零細業者が多く、効果もいまいちである。 思い出しながらの記述で一貫性のない文章になったが、他にも政治、ビジネス、帰国１０日前の地震体験等、大変おもしろい（辛い）経験をさせていただいた。 日本にはないエネルギッシュな国で、今後ますます経済発展するであろ。